先日、
もうすぐ18歳になる
雄猫のピイ太郎を連れて獣医さんに行った。
待合室に座って順番を待っていて
ふと見上げたら、
白い天井と白い電球があった。
この天井の光を覚えておこう、
記憶に刻もう、って
強く意識したことを思い出した。
3年前、
キャリーに入った白猫を抱えながら、
行きつけの獣医さんの待合室に座っていた。
倒れて1か月が過ぎて、
もう、
その時が来ているって
白猫のはるとここに来るのは
今が最後で
もう2度とない、と確信できた。
いつも混雑している獣医さんだけれど、
私たちが最後であるせいもあって、
その空間は白猫はるとふたりきりで、
時が止まったように静かだった。
18年前にはるが私の目の前に来てから、
人生が動き出した。
薄い色の生活が、
目に見えて濃くなっていった。
~ 猫は飼い主を選んで、
その出会いでその人の人生が変わる ~
その言葉の通りに。
どんな時もはるがいた。
はるの前ならいっぱい泣けた。
色濃くなる中に、
いつだってはるがいた。
18年は長い歳月なんかじゃない。
あっという間のお別れだ。
あっという間だった。
はるはプライドが高くて優しくて、
ツンデレ甘えん坊の猫らしい猫。
だから常日頃伝えていた、
「絶対に見えない場所で死なないでね」
「私の腕の中で、だよ」
「姿を隠して死んだりしないで、絶対だよ」
何度も伝えていた。
はると獣医さんから帰った自宅は,
3歳年下猫のピイ太郎以外は皆外に出ていた。
プライドが高い猫らしいはる、
セッティングしましたか?
ピイ太郎はスヤスヤお眠り。
はるとふたりだけ。
はる、セッティングしたね。
意識がなかったはるだけれど、
暫くすると、
私の呼びかけに目の光の焦点が戻った。
愛おしいものを見るように私を見て、
答えようと息を吸った瞬間が最後になった。
約束を守って私の腕の中で。
ありがとう、はる。
ありがとう、はる。
また会いたいよ。
ありがとう、はる。
また会いたいよぅ。
ありがとう、大好きな言葉。
だけど、
さようならの「ありがとう」
そんなありがとうがあるって事を、
この時初めて知った。
「私が生まれてきた訳は
愛しいあなたに出会うため
私が生まれてきた訳は
愛しいあなたを護るため」
はるを思いながら外を歩いていたら、
このフレーズが何度も耳に入ってきた。
何度も、何度も。
それはまるで、私に対する
はるの答えのようで、
心にきて切なくて
涙をこらえて歩くのが大変だった。
ありがとう、はる。
追記
何度も聞こえてきたフレーズは、後で調べてみたところ、さだまさしさんの「いのちの理由」でした。
歌詞はこれだけでなく温かくも切ない言葉が綴られているのですが、私の耳に入ってきた歌詞は、あのフレーズだけでした。